寺田寅彦  『天災と国防』

寺田寅彦の名言・格言  『天災と国防』より


「自然は過去の習慣に忠実である」

 
きのうあった事はきょうあり、
きょうあった事はまたあすもありうるであろう。

ものをこわがらな過ぎたり、
こわがり過ぎたりするのはやさしいが、
正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた。

人類が進歩するに従って
愛国心も大和魂もやはり進歩すべきではないかと思う。



天災と国防 】より
 

天災と国防 (講談社学術文庫)
 天災と国防 (講談社学術文庫)
寺田寅彦

■補足

「天災は忘れた頃にやって来る」
この言葉は防災でよく使われていますが、著者の寺田寅彦がこの言葉を初めに使ったと言われています。

災害はいつ、何処で起こるか、予測は難しいでしょうが、過去起こったことがある災害は、たとえ1000年に一度のペースであろうとも、どこかで起こりうる災害であるということでしょうか。

ちなみに本書で使用される「国防」は、仮想敵国から日本を護るという意味の他に、大規模の天災から国民を護るという意味でも使用されています。

国民を護るという意識が、幅広く政治内で浸透されたならば、人災、災害関わらず、恒常的な科学的研究と、実際に事が起こった時の迅速な行動に現れるものかと考えます。

戦前の文章ですが、現代にも通用するであろう警句に満ちた一冊です。


■関連書籍
 
天災と日本人  寺田寅彦随筆選 (角川ソフィア文庫) 柿の種 (岩波文庫) 科学と科学者のはなし―寺田寅彦エッセイ集 (岩波少年文庫 (510))

P・G・ハマトン 『知的人間関係』

■人間関係について名言・格言 『知的人間関係』


われわれは自分のことは百も承知しているのですから。
むしろ、自分のものの考え方を縛っている鎖を、
解き放ってくれるような友人が必要なのです。



われわれには未来の予想はつきませんが、
未来にそなえる最善の方策は、
現在を正直に自分を偽らず生きることだと言っていいと思います。


恋する者が本当に陥る自己欺瞞というのはただひとつ、
自分自身の愛情の強さを過大評価することです。


星たちは、ひしめき合っているように見えますが、
ひとつひとつは、果てしない大空に自分だけの静謐な空間を所有しているのです。


弁舌は銀であるかもしれませんが、沈黙は金なのです。


無知な愛国心よりもはるかに高尚ですぐれた愛国心というものもあるのです。
それは自国の反映を何にもまして気遣い、何事においても、
根も葉もない優越性に虚しい幻想を抱いて満足するということのない愛国心です。


礼儀というものの根本は、敬意を払いたいと思う相手のためなら、
自分がどんな犠牲も厭わない気持ちでいることを示すことにあります。





知的人間関係】より

知的人間関係
知的人間関係
Philip Gilbert Hamerton, フィリップ・ギルバート ハマトン, 下谷 和幸, 渡部 昇一




■補足

Philip Gilbert Hamerton(1834-1894)
P・G・ハマトンはイギリスの美術評論家、エッセイスト。

『知的人間関係』(原題:Human Intercourse)は、
ヴィクトリア朝時代のイギリスの、
代表的な知識人であるP・G・ハマトンによる、
家族・兄弟・友人との関係など、
様々な人間関係のより良い築き方や、人生観について綴られたエッセイです。

遠藤 周作 『ほんとうの私を求めて』

■小説家の名言・格言 『ほんとうの私を求めて』



生活と人生はちがいます。
生活でものを言うのは社会に同調するためのマスクです。
また社会的な道徳です。
しかし人生ではこのマスクで抑えつけたものが中心となるのです。



あまり自分の心に自信を持ちすぎて無防備であってはならない


我々は、無意識について隅々まで知ることはできない。
もし隅々まであまねく知悉できたとしたら、
無意識は無意識ではなくなるわけですから。


悦びと悲しみの中間の感情だって存在する筈です。
人生や人間は二分法では割りきれず、その中間か、
もしくは対立した二つのものを併合している状態だってあるのです。


嫉妬とは、自信を失いかけた心理が核となっている。


相手が求めない限りたがいに
土足で相手の内側に入ることを行わないのが、親しい友人への礼節だ。


「わたしは美しくなる。美しくなる」
とくりかえして心で言う人と、
「わたしはどうしていつも男の人に好かれないんだろう」
と愚痴っぽい気持ちで自分の顔を見る人とでは一年後、
いや半年後には魅力がちがってくるものでしょう。





ほんとうの私を求めて】より

ほんとうの私を求めて
ほんとうの私を求めて
遠藤 周作




■補足
えんどう しゅうさく(1923-1996)
遠藤周作氏は小説家。
キリスト教の信仰が主題の作品を、多数執筆しています。
主な作品は『白い人』『沈黙』『深い河』など。

『ほんとうの私を求めて』は、
人間の心の無意識についてや、男性、女性について、
また知人・友人達のエピソードなどが面白可笑しく語られています。

遠藤周作氏の人間観・人生観が気ままに綴られている一冊です。


トールキン『妖精物語について』

■文学者・詩人の名言・格言 トールキン『妖精物語について』



「空想」のなかで、人間は実際に神の「創造」の葉をひろげ、
その豊かさを増すことを手伝うことができるのだ。



理解が鋭く、明快であればあるほど、よい空想が生まれる。


いずれにせよ、窓をきれいにすることが必要である。
そうすれば、ものがはっきりと見え、
陳腐さだの、慣れだののせいで
視野がうすぎたなくぼやけている状態から解放されるのだ。


山々が本当はどんな山であるのか、その山々の向こうには何があるのかは、
その山を登ったことのあるものでなければわかりはしない。


それでも木は「木」ではない、
そう名付けられ、眺められるまでは、
凝りかたまっていた人の息がほどけて言葉となるまでは
そのように名付けられてはいなかったのだ。


人間の心は嘘で出来てはいない
それどころか、その知恵をあの唯一の叡智の主から引き出すのだ
そして人はいまもその叡智の主の存在を懐かしんでいる
その恩寵から遠ざけられて久しいとはいえ
人間はまだ全く堕ちてしまったわけでもないし、
全く変わってしまってもいない


準創造者としての人間は、屈折した光であって
ただの白色も、その人間を通せば
多くの色となって散らばり、そして絶え間なく生きた形となり
その中で混ぜあわされて心から心へと移っていく


私はあなたがたの進歩的な猿と共に歩もうとは思わない
直立し、分別はあろうとも、彼らの前には暗い淵が口をあけているのだ






トールキン【妖精物語について―ファンタジーの世界】より

妖精物語について―ファンタジーの世界
妖精物語について―ファンタジーの世界
J.R.R. トールキン, John Ronald Reuel Tolkien, 猪熊 葉子




■補足
John Ronald Reuel Tolkien(1892-1973)
ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン は、
映画『ロード・オブ・ザ・リング』の原作である『指輪物語』で有名なイギリスの作家。

『妖精物語について』は、
妖精物語(フェアリーストーリー)についての歴史や、
トールキン自身の考えが綴られたエッセイです。
“死後の世界”と“魂の救済”を象徴的に描いた『ニグルの木の葉』と、
『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルに
贈られた詩である『神話の創造』が収録されています。

渡部昇一『知的生活の方法』

■名言・格言『知的生活の方法』



身銭を切るということが、
判断力を確実に向上させるよい方法になる。



知的生活の真の喜びは、自己に忠実であって、
不全感をごまかさないことを通じてのみ与えられるもののようである。


刀の目利きになるいちばん確実な方法は、
自分の所有物として持ってみることでしょうな
by渡辺昇一氏の中学の英語の教師である佐藤順太氏


知的生活にとって、時間は空間によってその実質を何倍にも引き延しうる。


語学の規則や、基本文例を繰りかえして覚えるのはむしろ半端な時間に限る


よく射る弓は、よく弛ませなければならない。
同じように、よく使う頭はよく休めなければならない。





渡部昇一【知的生活の方法】より

知的生活の方法
知的生活の方法
渡部 昇一




■補足
知的生活の方法初版は1976年。

「高踏的な読書論・学問論ではなく、処世や生活設計を視野に入れた合理的な知識の蓄積方法を披露し、ベストセラーになった」
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

学生にお勧めな本ですが、勉強や読書の仕方は年代問わず参考になると思います。

モーリス・メーテルリンク『貧者の宝』

■文学者の名言・格言『貧者の宝』



魂は自分のとりわけ愛する仲間の魂に、
あるいは、たまたま自分の近くにいる他の魂に、
それまで苦しみながら集めた
心の宝を見せることのできる機会をうかがっているのである。



真実の存在を知るためには、己の内に沈黙を育まなければならない。


わたしたちの内には高い次元の生が一つならずあって、
そこで無意識に愛するのです。
…時には、はかないものにせよ、
心を打つ大いなる太初の一体性の記憶のようなものです。
この愛には何ものも逆らうことのできない大きな力があります。


己の内に未知なるものを蘇らせることが
人生の最高の目的でないでしょうか。


わたしたちが初めて真に生まれるのは、
人生の中には何か厳粛なもの、
予測もつかないものがあると深く感じ取ることができた時、
たとえば突然、天上の世界では孤立などないと感じ取るときだ。


わたしたちの神は一瞬たりとも語りやめたりはしないが、
その扉を少しでも開けようなどとは誰も思いつかないのである。


それが死の影で覆われていようと、
それにもかかわらず、
星ちりばめられた広大な天は、
君の魂の上に広がっているのではないのか。


真実を正しく見抜けるのは生者なのか、死に瀕した者なのか。
ああ、死を間近に控えた人々や、
大きな苦しみを経験したために
物事の本質を見抜けるようになった人々のように考えたり、
行為できる者は幸いだ。


人生の扉の隙間から差し込む一筋の光を見守り続けた日、
あなたは間違いなく、
敵の傷を手当てしてやったのと同じように
何か偉大なことをしたのである。
その時もう、敵などいなくなるのだから。


魂の揺るぎない深遠な領域で隣人を愛するということは、
他者の中の永遠なるものを愛することなのだ。


自分の内なる神から遠ざかる時、人は醜くなり、
それを発見するに応じて美しくなるのである。


まず自らの内なる神を相手に示さなければ、
相手の内なる神は見出せないだろう。


魂はもたらされた些細な事柄を美に変える


魂が罪悪の中から純粋な悔悟のダイヤモンドを抽出するなら、
罪悪でさえもまた価値あるものになるのではあるまいか。
犯した不正も、与えた悲しみも
いつか魂の中で光と愛に変化するのではあるまいか。


最も不幸な者たちでさえ、
あるいは最も貧しい者たちでさえ、
現実の彼らがどうあろうと、
魂の奥底には無尽蔵の美の宝を持っている。





モーリス・メーテルリンク【貧者の宝】より

貧者の宝
貧者の宝
M. メーテルリンク, Maurice Maeterlinck, 山崎 剛




■補足
神秘思想家でもあった、『青い鳥』で有名なメーテルリンクの一冊。


【サイト内関連記事】 メーテルリンク『青い鳥』
【サイト内関連記事】 メーテルリンク『死後の存続』

サン・テグジュペリ『人生に意味を』

■エッセイの名言・格言『人生に意味を』



木が花をひらくためには、
木を刈り込むだけでは充分だといえない。
春がこなければならない。



離陸するためには
飛行機を軽くするだけでは充分だとはいえない。
海風が吹かなければならない。


人間とはなにか、
もっともよくそれを発見することのできるのは
砂漠のまんなかでのことである。


人間の偉大さというものは、
人類全体の運命だけから考えられるものではない。
ひとりひとりの個人は、またひとつの世界なのだ。


肉体を抱くことではない、羽毛とも、光ともいえる、
そのからだを借りていた重たさのない天使を抱くことこそ、
愛するということだったのだ…


われわれが区別されるのは、
理屈から生み出される方法によってであり、
目的によるのではない。
われわれは戦争に際してたがいに敵対しあいながら、
そのじつ、おなじ約束の地をめざして出発しているのである。


偉大な人というものは、
種子をまかれるまえに耕されているものなのだ。


人生に目ざめるにはどうすればよいのか?
自分自身をあたえることだ。


絶対に自分が正しいと主張できる人がいるだろうか?
人間の眼にみえる領域とは、微少なものなのである。
言葉は不完全な道具にすぎない。


わたしがマルクシズムのなかで憎むものは、
それが全体主義とつながっている点である。
…わたしがナチズムのなかで憎むものは、
それがその本質からいっても全体主義を渇望している点である。





サン・テグジュペリ【人生に意味を】より

人生に意味を
人生に意味を
サン・テグジュペリ, 渡辺 一民




■補足
Antoine de Saint-Exupery(1900-1944)
サン・テグジュペリは、フランスの作家。飛行士。
代表作は『星の王子さま』

人生に意味をは、
サン・テグジュペリのエッセイをあつめた一冊。
飛行士でありルポルタージュ作家でもある
サン・テグジュペリの体験や時事評論が書かれています。
時代背景は第二次世界大戦に向かう頃。
当時の雰囲気がよく伝わってきます。

特に、飛行機でサイクロンに巻き込まれた時の
体験談などは読み応えがあります。


【サイト内関連記事】 サン・テグジュペリ『星の王子さま』

人間における運の研究

■名言・格言『人間における運の研究』



運命の女神というぐらいだから、運というのは女性なのですね。
従って女性的な性格が運の特徴です。



運が良くなるためには、女神に好かれなければならない。
女神は笑いと謙虚を大いに好む。


あわてたら、運は逃げていきます。
女神はオタオタするとんまな男は嫌いですからね。


与えられた福を使い尽くし、取り尽くしてしまわずにいると、
結果として福が回ってくるようだ。


人はその実力と見合った人と出会う。


なにかでひどい目に合って、その恨みつらみをいつまでも抱いている。
こういう人はどうも運がよくないようです。


自分に原因がなくて勝つこともあるのです。
相手がとんでもない悪手を指してくれたおかげで勝ちを拾った、
という具合にね。しかし、
負けたときは100パーセント、原因は自分にあるのです。





渡部昇一氏と米長邦雄氏による対談『人間における運の研究』より

人間における運の研究
人間における運の研究
渡部 昇一, 米長 邦雄




■補足
『人間における運の研究』は、
運についての渡辺昇一氏と米長邦雄氏の対談本です。
渡辺昇一氏は上智大学名誉教授で英語学者。
専門外の歴史・政治・社会評論で多数執筆してます。
米長邦雄氏は将棋棋士。五十歳で史上最年長名人になっています。
2003年で現役棋士を引退しています。

富の活動

■実業家の名言・格言『富の活動』



生計に困る人ほど貯蓄の必要がある



吾人の心掛くべきは、積土成山にあり。
・・・或いは投機により、或いはその他の方法によれば、
時に或いは一攫千金を得といえども、これ正しき道に非ず。


これはよいと思った事は決してそのままにせず、必ず実行してみる。
また、自分の慣習上、悪いと心づいた事は必ず禁断する・・・
おそらくは人間の貧富貴賎の岐れ目はここであると思う。





安田善次郎『富の活動』より

富の活動
富の活動




■補足
安田善次郎(1838-1921)は、富山県出身の実業家。安田財閥の祖。ちなみに、東京大学の安田講堂、日比谷公会堂などは、安田善次郎の寄付により建てられたものです。

『富の活動』は、一代で安田財閥を築き上げた安田善次郎の生い立ちや考え方、富を築くための習慣などが語られています。

ちなみに、大資産家の生計・生活を研究した『となりの億万長者―成功を生む7つの法則』という本がありますが、その中で、大資産家の多くが一代で財を築いているということ、また、財を築く人というのは、金銭的な意味で攻めにも守りにも強いということが指摘されています。(攻め:投資・事業など 守り:倹約・貯蓄など)

安田善次郎も典型的な大資産家の考え方・行動パターンをとっていて、同じく攻めにも守りにも強い人物のようです。その堅実な貯蓄法や投資術、事業に関する考え方などは、現代でも参考になるのではないかと思います。

お金が全てでは無いと思いますが、あまり悩まないですむ程度の経済的余裕は持ちたいもの。『富の活動』は、豊かな経済的基盤を持ちたい人、財閥を築いた人物の考え方を知りたい人にオススメの一冊です。

ちなみに、学者でありながら、一代で巨額の財を築いた人物である、本多静六とも仲が良かったようです。多少の違いはありますが、天引き貯蓄や投資法において、同じような考え方をしています。本多静六の『私の財産告白』などを読んで面白いと思った人は、安田善次郎の本も同じく面白く読めると思います。


・参考書籍
となりの億万長者―成功を生む7つの法則 私の財産告白





1