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ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』

注:ネタバレが含まれています。
■小説の名言・格言『ダ・ヴィンチ・コード』


人生には秘密がいっぱいある。
何もかも一度に知ることはできないんだ。



混沌とした世界の底には秩序が隠れている。


人間は自然の法則に従って行動する存在にすぎず、
芸術とは神の生み出した美を人間が模倣する試みにほかならない。


自由は高くつくものだ。


「私の知るかぎり」
ティービングは言った。
「人が無謀なふるまいに及ぶのは、
欲するものを得ようとする場合よりも、
恐れるものを取り除こうとする場合のほうがはるかに多い。」


「シラス…わたしから学ぶことが何もなかったとしても
…これだけは覚えておきなさい」
…「赦しの心は、神がお恵みくださった最高のものだ」


問題に正解がないとき、誠実な解答がひとつだけある。
イエスとノーの中間―沈黙を守ることだ。


わたしたちの魂の助けとなるのは謎と驚きであって、
聖杯そのものではないのよ。


振り子は揺れているのよ。
人類の歴史と…破壊の道の危うさを、
だれもが理解しはじめている。


聖杯の探求の目的は、マグダラのマリアの遺骨の前でひざまづくことだ。
貶められ、失われた聖なる女性に心からの祈りを捧げるために、
旅をつづけたのだよ。





ダン・ブラウン【ダ・ヴィンチ・コード】より

ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版
ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版
ダン・ブラウン, 越前 敏弥




■補足
ダン・ブラウンによるダ・ヴィンチ・コードは、
殺人ミステリーと歴史ミステリーをミックスさせた内容。
ルーブル美術館の館長が暗号を残した形で殺害され、
犯人と疑われた学者と暗号解読専門の女捜査官が事件に巻き込まれ、
逃走しながら秘密の暗号を解いていきます。

謎解きが面白いですが、途中で入る図像学の解説や、
キリスト教の背後にある秘密の歴史の解説で、
マグダラのマリアとイエス・キリストが実は結婚していたというあたりが
読者にとって興味深い内容になっているかと思います。

本書にでてくる絵解きで、
“最後の晩餐”の中のヨハネが実はマグダラのマリアだという解釈は、
多少厳しいような気がしますが、
そのほかの図像学的解釈は、
よく言われるようなのものも多くあります。

また、マグダラのマリアとイエス・キリストの結婚は、
ナグ・ハマディ文書等などを読むと、
真実味のある話ではあります。

○ダ・ヴィンチ・コード関連オススメ書籍

レンヌ=ル=シャトーの謎―イエスの血脈と聖杯伝説
レンヌ=ル=シャトーの謎―イエスの血脈と聖杯伝説
マイケル ベイジェント, ヘンリー リンカーン, リチャード リー, Michael Baigent, Henry Lincoln, Richard Leigh, 林 和彦

ダ・ヴィンチコードには、レンヌ=ル=シャトーの謎という本から参考に作られている部分が相当程度あります。ダ・ヴィンチ・コード関連書籍で最も重要な一冊なのですが、amazonのダ・ヴィンチコード関連書籍一覧にはなぜか載っていません。
話の重要な部分はほとんどこの本から採られていると言っていいと思います。



○マグダラのマリアとイエスの結婚について


ダ・ヴィンチ・コードの中で、
マグダラのマリアとイエスが結婚していた証拠として、
死海文書とナグ・ハマディ文書が出されていますが、
ナグ・ハマディ文書は日本語訳の本が出版されていて、
研究者でなくても容易に手に入り、読むことができます。

ナグ・ハマディ文書はキリスト教初期のキリスト教徒による文献。
通常の聖書にあるのは、マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの4福音書ですが、
それ以外の十二使徒による福音書と、マグダラのマリアの福音書があります。

ナグ・ハマディ文書 1 救済神話
ナグ・ハマディ文書 2 福音書
ナグ・ハマディ文書 3 説教・書簡
ナグ・ハマディ文書 4


この中のナグ・ハマディ文書 2 福音書に、
マグダラのマリアの福音書が入っています。
また、フィリポによる福音書も入っていますが、
この中で、「彼(イエス)の伴侶と呼ばれるマグダラのマリア」
という文言があります。

当時は30以上の福音書があったそうですが、
異端を排除する歴史の中で消されてしまい、
現在の4福音書(マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネ)のみになったそうです。


○ダ・ヴィンチの生涯

(記事追加予定)


【サイト内関連記事】レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上
【サイト内関連記事】レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 下


○聖杯について

(記事追加予定)




○キリスト教における、異端思想の受容の歴史について


キリスト教と異教・異端の関係は複雑です。
カルケドン信条に代表される、キリスト教が異端を排除してきた歴史と、
逆にキリスト教が異端を受容してきた歴史の二つが複雑にからみ合っています。

少しだけ、キリスト教と、
異端の思想であるキリスト教以前の思想、
また、イスラム教との関りを説明してみます。

イエスが結婚していたという記述は、
イスラム教にも伝わっていて、コーラン(イスラム教の聖典)やハディース(マホメッドの言行録)に嘘か真か分かりませんが、驚くような記述があります。

イエスはマグダラのマリアと結婚していた、
イエスは磔にならず、実は身代わりを立てて生き延びていた等…



実はイスラム教の中には、グノーシス系の思想の影響や、
ネストリウス派など異端キリスト教が入り込んでいる歴史があります。

9世紀、
ギザのピラミッドに大きな穴を開けたことで有名な、
イスラム教のカリフ“アル・マムーン”という人が、
知恵の館”(バイト・アル・ヒクマ)という図書館を作り、
ネストリウス派など異端キリスト教徒たちに
古代ギリシャの思想などを集めさせ、翻訳させています。
そのためにか、イスラム教の中に、
異端キリスト教、グノーシス系キリスト教が持っていた
神秘思想が深いところに入り込んでいます。

ちなみに、ピラミッドに関してですが、
イスラム教徒には次のような伝承があったそうです。

「大洪水が起こっても知恵が保存されるようにピラミッドは作られた」

アル・マムーンはギザのピラミッドに大きな穴を開けて探索しましたが、
よく“盗掘”と言われるので財宝が目的の墓荒らしと思われがちです。
上の言葉と、アル・マムーンが図書館を作らせ、
世界の叡智を集めたところを考えると、
ピラミッド内部の探索は、
古代の叡智がその探索の中心の目的であったとも考えられると思います。

そして、
この古代エジプト・ギリシャの叡智が集められたことによって、
イスラム教神秘主義の学問“スーフィズム
イスラム教錬金術”がその後に発展していきます。

こういった神秘思想が、十字軍の遠征を通して、
キリスト教に逆輸入されることになります。


その後、キリスト教世界では、ルネッサンス期に異端的思想の研究が過熱します。
プラトン・アカデミーを設立した“コジモ・デ・メディチ”という人物が、
その神秘思想の中でも重要な、「ヘルメス文書」を代表する文献を集めさせ、
マルシリオ・フィッチーノ”という思想家に研究させていました。

「ヘルメス文書」とは、
ヘルメス・トリスメギストスが語り役として出ている文献、
あるいはヘルメス・トリスメギストスが書いたとされる文献の総称で、
また、ヘルメス・トリスメギストスとは、
“三倍偉大なるヘルメス”という意味で、
ギリシャ神話のヘルメス、エジプトの神トートが同一視されたもの。
ヘルメス・トリスメギストスは、キリスト以前の賢者、
“エジプト・古代ギリシャ”の叡智を語る存在として
ルネッサンス以後、「ヘルメス文書」は盛んに研究されることになります。

ちなみにエジプトにヘルモポリスという地名がありますが、
ここはトート神が祭られている場所で、トート神をヘルメス神とを同一視したギリシャ人によって“ヘルモポリス”すなわち“ヘルメスの都”という意味で名付けられたものです。

プラトン・アカデミーでは、古代の思想が熱心に研究されましたが、
当時のプラトン・アカデミーには、
ボッティチェリ”、“ミケランジェロ”などの代表的な芸術家が通っています。
そのためか、ルネッサンス芸術の中に伝統的キリスト教には異端とされるようなものが相当入っています。

ダ・ヴィンチ・コードでは、レオナルド・ダ・ヴィンチが異端思想の持ち主だったと設定されていますが、
当時のそのような状況を考えると、実際にダ・ヴィンチが異端的思想に触れていたことは想像できると思います。
(ダ・ヴィンチ自身はプラトン・アカデミーの人達とはウマが合わなかったよう。
ただ、ボッティチェリとは仲が良かったようです。
ちなみに、当時の芸術家ヴァザーリの書いた『ルネサンス画人伝』という本を見ると、
ダ・ヴィンチは「異端的な思想の持ち主」と書かれています。)




○秘密結社の歴史について

(記事追加予定)


○ダ・ヴィンチ・コードをもっと理解するための関連書籍


ダ・ヴィンチ・コードに出てくる図像学の知識は、
一般的に言われているものから一般的になっていないものまで、
ごちゃ混ぜになって出てきています。
ルネッサンス前後の思想史、また、ルネッサンス絵画や彫刻のイコノロジー(図像学)系の基本的な本を読むと、ダ・ヴィンチ・コードに対する理解も深まると思います。

基本的な本としてパノフスキーのものを紹介します。

パノフスキー・イコノロジー研究
図像学関係の基本書。
日本の図像学関係の学者は、パノフスキーの研究を必ずといっていいほど下敷きにしています。分かりやすくはないので入門書というわけにはいきませんが、図像学を詳しく知るためには重要な一冊です。


また、図像学関連で日本のものだと高階秀爾氏や若桑みどり氏のものを。

高階秀爾・『ルネッサンスの光と闇―芸術と精神風土』
高階秀爾氏の本は分かりやすく書かれているものが多いので、ルネッサンス関連の入門書としてオススメです。

若桑みどり・『薔薇のイコノロジー』

また、ユングの本も図像学周辺の知識になると思います。

ユング・『変容の象徴』
ユングは心理学者ですが、
神秘思想や図像学に関して非常に深く研究していますので、
普通の歴史を学んでも見えてこない、歴史の奥に流れている思想史や、図像学関連の知識は参考になる部分も多いと思います。


ただ、
図像学的な解釈は様々な人が様々なことを言っていますので、
色々読んで比較することと、
実物の作品を見ることが大切かなと思います。


あと絶版本ですが、二冊ほど紹介します。

伊藤 博明「ヘルメスとシビュラのイコノロジー」

ルネッサンスの思想背景について書かれた一冊です。
キリスト教が、いかに異端的なものを取り入れていったのか、
その受容の歴史について研究されています。


荒井 献「ヘルメス文書」

ヘルメス文書に代表されるヘルメス思想は、
西洋の科学の発展に深く入り込んでいると言われる、西洋の底流を流れる思想です。
ニュートンなどの科学者が、ヘルメス思想に関するかなりの研究を行っていました。
重要な文献なのですが、これもまた絶版本。



また、謎に包まれたイエスの生涯についての本として、
イエスの失われた十七年という本があります。かなり変わった内容の本です。

--以下内容です。
十九世紀、ニコラス・ノートヴィッチは、
チベットで仏教徒に伝わる古文書を発見。
その中に聖書のような内容のものがあり、
モーセの時代のイスラエルからイエス伝の内容が書かれていました。

調べていくと、なんとその中でのイエスは、
インド、チベットまで行っていたという衝撃的な内容。
そこでのイエスは、低いカーストの者達に道を説き、
それが災いして迫害を受けます。

その後、迫害から逃れつつ仏教を学び、
ゾロアスター教の教えと対立、
そしてイスラエルに帰還していたということです。

ニコラス・ノートヴィッチはその内容を複写し、
紹介しましたが、完全にトンデモ本扱い。
当時ほとんど無視されていたそうです。

しかしその後、ニコライ・レーリッヒという著名な人物が
チベットで同じようなものを発見します。

現代ではあまり知られていないと思いますが、
このニコライ・レーリッヒはという人物は、
万能タイプで、考古学の大学教授にして画家、神秘思想家、冒険家という人物。
歴史上で名前が出ているところの例をあげると、

・ストラヴィンスキーの『春の祭典』の、
舞台美術と考古学的見地からのアドバイザー。

・国際連盟レーリッヒ条約という、
戦争時の文化財保護についての条約の考案。


また、ガガーリンの“地球は青かった”という有名な言葉がありますが、
実はこれには“まるでレーリッヒ・ブルーのようだ”という続きがあります。
このレーリッヒ・ブルーとは、画家レーリッヒの使っていた、
神秘的な青を称えて言われていたものです。

つまり、当時のトンデモネタだったものを、
著名な人物が見つけて紹介したもので、
当時、結構な衝撃を与えたようです。

ただ、その後原本が消失、
本当か嘘かも分からず歴史の中に消えていってしまいました・・
--

どこまで真実か分かりませんが・・。
事実だったら面白い話かなと思います。


レーリッヒの本や、画集などに興味のある人は、

アマゾンでニコライ・レーリヒの本・画集(洋書)

また、レーリッヒミュージアムのホームページで、
レーリッヒの絵画作品の画像を見ることができます。





ダ・ヴィンチ・コードの映画を見た人は、是非原作も。
結構夢中になって読めるので、本をあまり読まない人にもオススメの一冊です。






■ダ・ヴィンチ・コード参考サイト・ブログ
ダ・ヴィンチ・コード物知り事典
ダ・ヴィンチ・コードで出てくる用語の解説がされています。

『世界に学ぶ、日本を知る夜明け前』さん
サルでも分かるダ・ヴィンチ・コードの面白さ
映画の感想とダ・ヴィンチ・コードの魅力について語られています。

『叡智の禁書図書館』さん
ダ・ヴィンチ・コード関連の書籍が数多く紹介されています。


| 小説・詩の名言・格言 | 10:54 | comments(0) | trackbacks(2) | - | - |
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「ダ・ヴィンチ・コード」を読む
映画がもうすぐ公開される、このベストセラーの話題本、 2004年12月26日に書いた記事を採掲載する。 この本がどんなふうに表現されるのか楽しみだ。 「ダ・ヴィンチ・コード」★★★☆ ダン・ブラウン著 分厚い本、しかも上・下巻が平積みで目を引く。 文庫ま
2006/05/14 1:51 AM, from soramove
サルでも分かるダビンチコードの面白さ
『ダヴィンチコード』を観てきました。以前にも、予告編で興奮(GO)し、世界が騒々しくなって興奮(GO)し、二回の記事を書いてきました(笑)。今回、その念願の上映作品を満足して観終ったとき、館内を見渡すと、目が点になっている人が多かったことに気付きました。 イ
2006/05/21 11:06 PM, from 夜明け前

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